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糸が伸びている。私の心臓から伸びたその糸は、私以外には見えていないらしく、そして動いたからといって体に絡まることもなかった。生活に支障はない。かといってこの糸の先に何があるのか気にならない訳でもない。この糸を切ったらどうなってしまうんだろうか。死んでしまうんだろうか。そんな思いもあった。別段死んだって構わないが、それならばいっそ、切ってしまう前にこの糸の先を見てやろうじゃないか。
私は糸の先を辿った。バスに乗り、電車を乗り継いで辿り着いたのは、都会から外れた知らない土地だった。辺りを見渡し、糸が伸びている方向へひたすらに足を進めた。

6/18/2025, 3:54:12 PM