水晶

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『愛を叫ぶ。』

私は仕事を終えると最終列車に乗り込んだ。毎年、仕事の立て込むこの時期は暫く最終列車に乗る生活が続く。だが、それもそろそろ限界になってきた。周りを見ると、やはり疲れた顔をした人達ばかり。一刻も早く家に帰りたいが、残念な事にこの電車は各駅停車だった。

発車のベルが鳴った。静かに電車が動き出す。するとホームの階段を物凄い勢いでかけ降りて来る男性が見えた。
「待ってくれー!その電車待ってくれー!なつみー!待ってくれー!なつみー!待ってくれー!」
男性は走りながらなりふり構わず必死に叫ぶ。が、電車は止まる事無く加速し男性はみるみる小さくなった。

最終列車を追いかける電車はもう無い。これからあの男性はどうするのだろう‥
そんな事を考えていると、次の無人駅に着いた。
おや、珍しい。今日はここで降りる人がいる。白いコートのその女性は改札を出ると待たせてあったタクシーに乗り込み、もと来た方へと走り去った。

5/12/2024, 7:19:28 AM