学校の帰り道、ふと空がきれいだなと思った。西の方角に、薄青色に少し灰色が混ざった雲の大軍に、夕日の名残りのような鮮やかなオレンジが、カーテンのようにかかって絶妙なグラデーションを生み出していた。手に取ったスマホでカメラを開く。パシャリと、軽やかで小さな音が一つ、空気の震えを通して耳に響いた。気が向いた未来の僕が、後にスマホの壁紙にでも設定するのかもしれない。
僕は、こういうふとした瞬間を、存外気に入っていた。ふとカフェインを含んだ苦いコーヒーを飲みたくなったり、ふと気になるタイトルがつけられた本を読みたくなったり、ふとお店で流されていたBGMが、なんていう曲なのか知りたくなったり。ほんの少しだけ、心が弾むのだ。
ほら、今日だってふとアプリを起動したら、ハートマークが着いていた。僕の書いた脆くてつたない文章が、誰かの心に留まったことを知って、ふと嬉しくなった。
4/28/2025, 9:20:25 AM