「うワー降ってきたね」
「ですね」
さっきから危うげな色をしていた雲が、ついに耐えきれずに雨を降らしだした。
「シンって『傘』使えたっけ」
『傘』はその名の通り雨に濡れないように全身を覆う魔法だ。
「使えますけど…シューさんが私の分までやって下さいよ、魔力余ってるでしょ」
「余ってるとは言いかたがワルイなー…あ、でも折角だからワタシの特異性質をお見せしよう」
フッフッフと笑うシューさん。機嫌が悪いと私の分をやってくれないどころか自分で魔法をかけようとしていると妨害してくるので、今日は大当たりだ。
で、彼女の特異性質…と言ったら、主人資格〈マスターキー〉、または聖人素質と呼ばれるもので、簡単に説明すると「願えば叶う」能力。
普通の魔法は炎を出すにも、大きさ、色、温度、形、魔力から炎を精製するイメージなど色々な事を考えなければいけない。
でもシューさんの場合、「焚き火がしたいなー」
と思うだけでそれが叶うらしい。
便利!すごく便利!
「じゃーヨク見ててね」
「はい」
《あーワタシ雨に濡れるの嫌だなー》
彼女の体が光に覆われた。
「おおおおー」
「スゴイでしょワタシの魔力さんはトテモ賢くて優しいんだからね」
そう言うと、シューさんはいそいそとバッグを持ち直した。
「じゃ、先に帰ってるね!」
「え」
手元を見ると、光がない。そういえば私には『傘』をかけてくれてなかった…。
「ちょ、ひどいですよシューさん!」
9/27/2024, 10:48:38 PM