白糸馨月

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お題『夏』

 今は夏空の下を歩きにくくなったと思う。日中に外出てしまったらムワッとした熱気と、肌を焼く感覚と、体を流れていく汗が吹き出して「あっ、これ人間が歩く場所じゃないわ」ってなって家に引きこもるんだ。
 自分の部屋へ戻ったら、パソコンをたちあげてゲームを始める。もちろん、部屋はクーラーをきかせて。ここ数年、夏はこうして過ごすことが多くなった。
 夏は海だの、かき氷だの、花火だの、イベントがいっぱいあるが、まず一緒に行く友達も恋人もいない。
 ふと、机の上に置いたスマホが光る。Facebookの通知で開いたら、たまたま繋がってしまった高校のクラスメイトの陽キャが男女で花火に行った時の画像をあげているのを見てしまった。圧倒的な敗北感を覚えて舌打ちする。
(あーいいですねー、陽キャ様は、いつだって友達に困ってねーし、女にもモテてるし。世の中不平等だろ)
 俺は心のなかで親指を下に下げるボタンを押した。リアクションしないだけ、いや、ブーイングのボタンがないだけありがたいと思え、とスマホをベッドの方に投げ込んだ。

6/29/2024, 2:43:18 AM