海へ
スマホで撮影した。
教科書、ピーマン、父親、クラスの無駄にうるさいヤツ、口だけは御立派な部活の先輩。
金曜の夕方、台風が来る前にと思って急いでバイクに乗った。
1時間半走らせた。海へ。
日が沈む前に着いた。ちらほらと人の姿もある。
良かった。海面は金色。きらきら。この世には美しさがあるって確認できた。
ずっと見ていたかったが、間もなく日は沈む。その前に。
波がヒザ下まで来るところまで進んだ。
ポケットからスマホを取り出し、夕日に向かって投げた。
一瞬の、僕にしか聞こえない小さな着水音。
もうどこへ行ったのかもわからない。台風がくれば、もっと沖の方まで、遠くへ遠くへ、あいつらを運んでくれるだろう。
大丈夫さ、僕は。大丈夫。
濡れた足のままバイクに乗り、明日を生きるために自宅に向かった。
8/23/2024, 11:45:05 AM