いろ

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【雪を待つ】

 しんと冷えた空気が、皮膚を裂く。灰色の曇天からは今にも雪がこぼれ落ちそうだ。吐いた息が白く天へと吸い込まれた。
 きっともうすぐ、今年最初の雪が降る。そうすれば君が姿を現すだろう。境内が静かな白に包まれる間だけ言葉を交わすこととできる、麗しい僕の神様が。
 冬は嫌いだ。水仕事をする手はかじかんで、あかぎればかりになる。足先は冷えて、薄いせんべい布団じゃ寒すぎてまともに寝入ることすら難しい。だけどそれでも、君に会うことができるほんの短い季節だから。それだけで大嫌いな冬を、少しだけ好きになれるんだ。
(早く会いたいな)
 雪の降る日を待ち遠しく思いながら、僕は井戸のつるべをからからと巻き上げた。

12/16/2023, 3:27:02 AM