なまえのない物語

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目的のない散歩は良い。
どこに行くでもなく目についた道に入るだけ。
殊に、雨音が人の気配を消し、湿った空気の匂いがする雨の日は、良い。
ただ、雨は嫌いだ。
雨は、記憶にかかった埃をすあっとどこかへ流してしまう。
雨は、あの日を写し出す。
雨音に紛れて聞こえてきた旋律に、足を止めたあの日のことを。
あの音は、どこから来たのだろう。
あの音は、誰が響かせたのだろう。
あぁ、雨が嫌いだ。

今日も雨が、降っている。

《もっと知りたい》

3/13/2026, 8:08:40 AM