いぐあな

Open App

300字小説

慌てん坊のジミー

 もうすぐハロウィン。村のあちこちに飾りが飾られ、お祭りの準備が始まっているのに僕の気は乗らない。
「……ジミー」
 一番、仲良しの友達のジミー。あんなにハロウィンを楽しみにしてたのに、秋の初めに天国に旅立ってしまった。
 大きく息をつく。と、耳に聞き慣れた足音が聞こえてくる。
 カボチャの被り物にローブ、手にホウキを持った子供が道の向こうからやってくる。
「Trick or Treat!」
 聞き覚えのある声に思わず吹き出す。
「ジミー、ハロウィンは六日後だよ」
 しまった! と言うようにカボチャ頭を振って、子供はくるりと僕に背を向け、道を戻っていく。
「ハロウィンには一緒に回ろうね!」
 潤む視界の小さな背に僕は声を張り上げた。

お題「友達」

10/25/2023, 12:21:36 PM