そっと伝えたい
お菓子作りなんて滅多にしないものだから、随分と時間がかかってしまった。
溢したり落としたり焦がしたりと波乱万丈の末、目の前には想定より幾分か控えめな量の焼き菓子がある。
まあ、あの子は顔が広いから、沢山の人から貰うだろう。
多すぎても食べきれなくて困らせてしまうかもしれないし、結果オーライだ。うん。
ありふれた包装に、何の変哲もないメッセージカード。
そこに純然たる愛の告白なんて記すことができたなら、どんなに良かっただろうか。
それで形容できるほど、この感情は美しいものでもなければ、単純明快とも程遠いものだ。
あの子がいないと生きていけないことだけが確かで、
それと同時に、あの子の枷になることだけは嫌だという思いが確かに存在している。
散々思考を巡らせた後、大きく溜息を吐き、友人としての感謝を簡潔に書き綴る。
悩んでいたせいですっかり遅い時間になってしまった。
明日に限って寝坊する訳にはいかないのだから、もう寝なければ。
綺麗な上澄みだけ掬い上げて、そっと渡すから。
その下に暗く澱んでいるもののことなんて、知らなくていいよ。
2/13/2025, 12:08:30 PM