夜空の音

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見えない未来へ

「次は2週間後頃ですね、いつがご都合つきますか?」
「じゃあ、2週間後の12月4日にお願いします。」
「はい、12月4日に予約おとりしますね。お時間は何時頃がいいですか?」
受付のお姉さんは綺麗な髪をしている。染めているのか少しブラウンがかったその髪は毛先をワンカール。大人しいメイクは目元のラメが上品に光り、小ぶりなピアスが髪の隙間からきらりと光っている。
対する女は、手入れしていない髪を隠すように1つに束ね、深く帽子を被る。その下にはマスクで顔を隠した眉毛を書いただけの顔がある。
「午後でお願いします。」
「それでは今日と同じく16:00はいかがですか?」
「大丈夫です、お願いします。」
女は慣れたように返事を返す。このやり取りを何度も繰り返しているのがよくわかる。
「はい。それでは12月4日の16:00にお待ちしてますね。」
受付のお姉さんはにこりと綺麗な笑顔を浮かべて、お大事に。と女に告げる。女は、ありがとうございます。と呟いて、そそくさとその場を後にした。

22:00。
夜と夜中の堺のこの時間、女はやっとお風呂に入って寝る準備をした。
「おやすみ。」
同居する両親に挨拶をして、1杯の水が入ったコップを片手に自室へ向かった。
部屋の椅子へ腰掛けると、ひとつため息を吐き、今日もらった袋からパキパキと手馴れた様子で多くの薬を手に出す。
それを水とともにごくりと飲み、顔をしかめる。
「....まず。」
日記を取り出した女は、淡々と文字を綴る。書き上がったものを1度目を通し、今日も楽しいことを書けなかったと落胆する。
パタンと日記を閉じ、定位置へ戻すと女はベットへ向かい、電気を消し、布団に潜り込み、スマホを充電した。
真っ暗な部屋の中何度も目を閉じ、目を開け、また閉じる。それを長い時間繰り返した。慣れた日常でも、やはり心は沈み込んでしまうらしい。女はなんとなく手首の古傷に触れ、ため息を吐く。
薬の効果は全く感じられない。昨日も、今日も、明日も。ずっと変わらない。

11/20/2025, 10:26:54 AM