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お題:暗がりの中で

 随分長く眠ってしまってた。
目を覚めたはずなのに、周りは何も見えない。
実はまだ眠っているのだろうか。
 体を起こそうとするも、体は鉛が乗ってるいるのかというほど動かない。
耳を澄ますと誰かの声がする。
『ね…だ…るの?さ……よ…』
(誰の声だろう?懐かしくて落ち着く声だな)
 私の方に近づいてきてるのか、足音がする。
声を出したいけど、声が出ない。
体は動かない、声は出せない、そんな日が続いた。
声の主は毎日通って来ていることが分かった。

 意思疎通ができない日々で分かったことは、ここは病院で、毎日私のもとに来ている人は私の恋人だということだ。
どうやら私は事故か何かで長い間意識が無かったようだ。

 恋人はずっと目が覚めない私のもとに来ているようだ。
 私のことなんて忘れてくれたら良かったのに…どうして私はあなたに好きだよも伝えれないのだろう…
そんなことを思いながら私はまた眠る感覚に落ちた。

『ねぇまだ寝てるの?そろそろ起きて寂しいよ』

また声がする。今度こそ私は重い瞼を開けた。

「うん、待たせて…ごめんね…」

恋人の目が見開いた、顔がクシャクシャだ。
思わず私は笑ってしまった。

『待たせすぎたよ、ずっと真っ暗な世界に居たんだよ』 
「私も…暗がりの…世界だった…あなた…の声が…聞こえた」

暗がりの中で聞こえた声を頼りに私はここに戻れたんだって伝えたい。

『信じて待ってて良かった』
嬉しそうに泣く君を見て思った、私を待ってくれてありがとう。

暗がりの中で聞こえた声は私にとっての光でした。

10/29/2023, 9:26:37 AM