ストック

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Theme:忘れたくても忘れられない

※ 鬱病などメンタル疾患を治療中の方は、閲覧をお控えください ※

ものを覚えることは努力すればできるのに、忘れることはできないのは何故なんだろう。
立ち直ろう、新しい人生を歩もうと何度決意しても、忘れたい記憶は不意に顔を出す。

数年前、私は鬱病を患い、それまで10年以上勤めてきた会社を退職した。
半年程療養し、2年ほど就労移行支援(※1)センターに通い、ようやく世間では大企業と言われる会社の特例子会社(※2)に就職が決まった。

治療を続けながら自分と向き合う日々は、本当に辛かった。泣き明かした夜もあれば、部屋の家具を叩き壊したこともあった。

でも、それを乗り越えて再就職が決まったときには、これで全て終わったと思った。
私は新しい人生を生きる。そのスタートを切ったと思った。

しかし、現実はそんなに甘くなかった。
忘れたくても忘れられない過去がどこまでも追いかけてくる。

「昔はこの程度の仕事、難なくできたのに」
「どうして頑張ってはいけないの?私はずっとそうやって生きてきたのに」
「あの人が言ったように、私は使えない人間なんだ」

友人や家族は私が新しい人生を歩み出したことを祝福してくれる。
でも、その道は常に過去がついて回る茨の道だ。そんなことを考えるの贅沢なのだろうし、理解が得られるとも思えない。だから、私はなにも言えない。

忘れたいのに忘れられない記憶。恐らく、生涯消えることはないのだろう。
この記憶を昇華できる日はいつか来るのだろうか。
私が自分に誇りをもって、過去のことも語れる日は来るのだろうか。


※1 就労移行支援:障害者への職業訓練制度(鬱病は精神障害として扱われる)
※2 特例子会社:障害者の雇用において特別の配慮をする子会社

10/18/2023, 9:33:24 AM