蝉助

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透明なカゴの中に入っている。
透明なので触れも感じもできないが、そこには確かに境界線がある。
世界はそれで覆われている。
なんのため?
……。


「なんの為だと思う?」
「知らんです。」
無関心そうに朔真はコーヒーを啜った。
「んー……どうしてあるんだろう。」
クルクルと椅子を回転させ、もうお手上げだと言わんばかりに未来は手を上げた。
彼は新しい短編小説に向けて執筆作業に勤しんでいる。
さっそく数行を書いてみたが、どうにもしっくりこないようで、昨日今日のようにこちらの部屋へやってくる朔真に尋ねてみた。
しかし朔真その話題にそれほど興味がない。
完全に行き詰まったと、未来はため息をついた。
「透明なカゴ……そんなのないんじゃないの。」
「いやあるよ。」

5/21/2024, 11:28:25 PM