須藤 東

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『クロアゲハ』


初夏の夕暮れ
生垣に咲き並んだ
白いツツジのひとつにも
受け止められずに落ちている
クロアゲハの亡骸を見つけた
つがいだったのだろう
みずみずしい果実の香りの
遺されたクロアゲハが
黒い翅を尖らせて駆けて来た
それでも死に轍は無く
今から追いつくことは叶わずに
あとは薄暗い夢のほとりのように
そばで漂うだけだった
儚い生命体の刹那は
ほんとうに長かったのかもしれない
そのどこかで気づいたようだった
できるこれ以上の弔いが自身に無いことに
金色に滲んだ西陽のきらめきが僕の背中を
じりじりと熱くしていた
ざらざらとした砂の香りの亡骸を
ゆっくりと両の手ですくいあげて
ツツジの根元に広がっていた
湿った夕闇のなかに置いた
そうしてクロアゲハはゆっくりと
沈んでゆく残った今日の
どこかへ飛び去った

4/28/2026, 10:07:44 AM