花とコトリ

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「My Heart」

三月の光は、透きとおった水槽の底に沈んでいるみたいに静かだ。
窓をあけると、風にのってやってきた満開の桜の匂いが、胸の奥のいちばん柔らかい場所に触れる。

「ねえ、クロ」

足元で小さく欠伸をした君を呼んでみる。
老いて少し白くなったその背中に触れるたび、私の心は、昨日よりもずっと素直な形に整えられていく。

特別なことなんて、本当は何ひとついらないのかもしれない。
ただこうして、淡い朝の光のなかで、
大切な命の鼓動を手のひらに感じていられること。

私の世界は、そんなささやかな断片だけで、
もう十分すぎるほど、満ち足りてしまっているのだから。

3/27/2026, 1:17:23 PM