踊りませんか?
あの人と踊れたらどんなに素敵なんだろう、と少女は遠くから憧れの彼を見ていた。
とあるパーティーに招待された少女は会場に併設されたテラスで一休みしていた。
自分では到底届くはずのないキラキラした存在。
かっこよくスーツを着こなす今日は一段と輝いている。
『彼と踊れたら…なんて』
こんないち少女に、彼が振り向くとは思えない。
会場では、パートナーがいるカップルたちが音楽に合わせて楽しそうにステップを刻んでいる。
動きに合わせて、ドレスのスカートが揺れたり、くるくる回って蝶のように美しかった。
『せっかくお洒落したのになぁ』
落ち込みそうになる気持ちを振り払うように、彼らから目を逸らした。
『踊りませんか?』
振り向くと、憧れの彼のがそこにいた。
『えっ…と、でも…わ、たし』
突然のことにパニックになり、鼓動が早くなる。
しどろもどろになる少女に、彼は微笑んだ。
『お嬢さん、僕と一緒に踊りませんか?』
そう言って、手を差し出す。
これは夢なのか。
少女は勇気を出して自分の手を重ねる。
美しい満月が二人を照らしていた。
10/5/2022, 7:35:46 AM