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#Kiss

―――

まるで油を差された様に
独特の苦い香りが、鈍い頭を回し出す

それに釣られ隣を見遣れば、彼が居た。
ごく自然にカップを傾ける姿は、妙に絵になっている

視線に気が付いたのか、細められた瞳と目が合った
驚いて逸らしても、今度は彼が視線を刺してきた

...嗚呼、そう言うのは自分の顔の事分かってからしろよ。
こうして悪態をつくことすら癪だが、心の中は自由である

そうして一息ついて、再び顔を向ける。

すると顔に影が差して、目の前にあった彼の顔が見えなくなった
ふにっと、額に感じた感触。
...顔が熱くなるのに、そう時間はかからなかった

「...おはよう」

名前を呼ばれ、我に返る
そんな様子が面白かったのか、ケラケラと笑われたので拳が一発出そうになった。

彼は時折、こういう事をして、同じように笑う。
まぁ、似た反応をしてしまう自分のせいもあるのだろうが

朝から調子を乱されるのが悔しくて、でもまだまだ慣れそうにはなかった。

だから、と言うのは少し違う気がするが。

少し目線を下げ、標的を定めて。

未だ方を震わす彼に声を掛け、「なんだ」と目を開いた所で、全く同じ事をしてやった。

久方振りに見る豆鉄砲を食らったような顔に、思わず笑いが込み上げてきた。
あんな事を思った後だったから、余計に。

「.........本当、お前なぁ......」

絞り出す様な掠れた声が耳に届く。
顔に手を添えられ、またも目線がかち合う。

...朝で良かったなぁと、そう言われたのは、また別の話

2/4/2026, 12:49:12 PM