君と暮らすようになってから、朝昼晩三食キチンと食事をするようになった。
時間ギリギリまで寝て、飲まず食わずで身支度を整えて家を出ることもあった自分が。
まだ青っぽい朝日を浴びながら、こんがりと焼けたトーストにバターをカリリと音をたてながら塗り拡げる。
じんわりと蕩けていくバターを一瞥、あむっと口を大きく開けてトーストにかぶりついた。
バターの旨味と塩気がトーストの甘みと混ざり合って、小麦の香ばしい薫りが鼻に抜けていく。
幸せ。緩んだ頬をそのままに食べ進めていけば、向いに座る君がほんのりと笑みを浮かべていた。
なあに、と君に聞けば、同じようにトーストをひと噛りしつつ君は笑う。
「ただのトーストなのにさ、幸せそうに食うなあと思って」
そう言ってサクサクとトーストを食べる君。
……気付いてないようだけどさ、君だって。
今、とっても幸せそうな顔してるよ。
ヒョイっと口に入れたトーストの一欠をコンポタで流し込んでから笑って言ってやる。
「だって、幸せだもの」
君と食べる食事は、何だって美味しく感じるから。
この時が、これからもずーっと続けばいい。
そう思ってる、絶対に言わないけどね。
テーマ「裏返し」
8/22/2023, 4:09:19 PM