サチョッチ

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先祖代代受け継がれたマントを、彼は自分では纏わない。
ただ一人、愛した人を守るためだけに、光の差さない常闇のような漆黒を広げる。
腕に抱えたぬくもりがマントの内側で呼吸をする。
細く白い首筋に血の滲んだ噛み跡が見える。
「ごめんね」
唇を紅く濡らした彼が、切なそうに呟く。
ともに永遠であるためには、愛する者の生き血を啜らなければならない。
見た目ではどんなに小さくても、心には深く大きく残る傷を刻まなければならない。
たとえ相手がどんなに大切であっても――。



それが、彼の受け継いだ一族のしきたりだった。

5/29/2023, 12:56:57 PM