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…夢、か。
そんなもの、私、見た事ないや。

虚空を見つめる少女の瞳に光は宿っておらず、誰1人としてその事に言及する者はいなかった。
言わば、少女の独壇場。少女のみ辿り着ける、境地。

…嗚呼、私は一体、何の為に生きてきたのだろう。
好きな人に告白して、受け入れられて、奪われて、裏切られて。
家族に愛を欲して、貰って、崩れて、消え去って。
友人に秘密を話して、約束して、暴かれて、孤立して。
こんな運命に生きるのなら、最初から堕落者で良かった。
此処には最早、私以外の生等無い。否、元から私だって、生を謳歌していたとは言い難いし、それすらも傲慢な気がするけど。

少女の好きな色は赤色だった。然し、部屋は灰色、否、黒色。明かりを付けていないからだ。敢えてそうしている。少女は今、赤色が大好きだから。
…不意に、足音が聞こえてきた。慌ただしい足音。

__嗚呼、私だけの聖域に、なんと無作法な。

「***!!見つけたぞ!」
「貴様を大量殺人容疑で逮捕す……!?」




「……貴様だと?その台詞は私のものだ。私の聖域に勝手に踏み入って、巫山戯るな。私の安息を壊しやがって…!」




静寂な部屋に、また、赤が飛ぶ。
けれど真っ暗だから、きっと私以外は見れないよね。
嗚呼、私だけの赤色を独り占めなんて、素敵だなぁ。
そうだよ、私は自分の安息を、この赤くて黒くて、静寂な部屋を守りたいだけ。それの何が悪いの?

君達は静寂を知らない癖に、さ。

9/29/2024, 4:31:30 PM