赤い糸ってやつが、見えた。これは冗談や比喩なんかじゃない。クラスのマドンナ、ユリカちゃんの小指から、俺の大大大親友のシュージの小指にガッツリ結ばっている。信じられないが、本気で見える。なぜならそう、信じるに足る材料がある。俺の親指からシュージの親指には、金色の毛糸が繋がっていた。これは恐らく恋とか愛とか運命ではなく、友情の糸だ。だってこんなに太いんだから。毛糸だぜ、毛糸。
「お前、ユリカばっかり見てどうしたんだよ」
「……んや。お前と会えてよかったと思って」
「キンタお前……!」
小学校からの仲なだけあって、シュージも感動してわなわな震えてやがる。
「気色が、悪いな」
「そこは感動してるんじゃねーの?!」
ついかっと来て、シュージの方を向いて立ち上がると、周囲の目もこっちに向いてくる。そうだよ今は授業中だ。
「今日もお前の歯はでっかいなあ」
「マジでそこ見てるのお前だけだぜ」
でも俺の突飛な言動にツッコミを入れてくれるのも、シュージだけなんだな。
俺の自慢の糸切り歯、ユリカちゃんとシュージの間にある赤い糸なんて、直ぐに切れるってーのに。ガチガチと空に歯を鳴らす。
瞬間、風に吹かれた赤い糸は宙に舞う。
「あっ」
糸切れちゃった……。で、でもこれは偶然、偶然だからオレ悪くないよ、悪くない悪くないうん。だってシュージとユリカちゃんにはこれ見えてないもんな。
「どしたのキンタ」
「な、なんでもないぜ」
翌日。俺の小指から赤い糸が生えた。行き先はユリカちゃん。さすがはクラスのマドンナである。
6/19/2025, 7:48:54 AM