「微熱」
久しぶりに風邪を引いた。
あたまがいたい。からだがいたい。
あついのかさむいのか、それすらもわからない。
微熱に酔っ払ったみたいに踊ってみる。
せかいがぐるぐるまわる。
家具まで踊り出す。
微熱に酔っ払ったみたいに歌ってみる。
わたしのうたごえがわんわんひびく。
つられてピアノも歌い出す。
微熱に酔っ払ったみたいに笑ってみる。
わたしのわらいごえがくうきをつきぬける。
空気が赤くなった気がする。
微熱に酔っ払ったみたいに泣いてもみる。
わたしのなみだがおはなにふりそそぐ。
花が涙色に染まる。
微熱に酔っ払ったみたいにベッドに寝転がる。
あつくてけりあげたふとんがすなになる。
部屋が砂漠になる。
微熱は私を酔わせて弱らせて。
風邪の原因よ。
あなたはだれなの?
どうしてわたしをよわせるの?
どうしてわたしをよわらせるの?
酔って弱って、たのしいたのしい。
意味もなくまた笑う。
からから、笑い声が空虚に響く。
部屋は静かになった。
ああ、怖い怖い。
わたしはこのまましんでしまうのかしら。
ちゃんとてんごくへいけるのかしら。
私は生きたいのかしら。
それとも逝きたいのかしら。
だんだんへやとわたしのさかいめがぼやぼやしていく。
なのにまぶたもカーテンもとじない。
まるであめざいくでかためられているかのように。
ああ、すきまかぜがきもちいい。
つめたいみずがほしい。
ぎゅっとだきしめられたい。
風邪を引いた私を、愛してほしい。
どうかおねがい。
愛して。
11/27/2024, 9:53:49 AM