びっぴ

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お気に入り

先生のお気に入りになりたい。

ひと目見てそう思った。
ハンサムで優しそうな顔にどこか闇深そうな笑顔を浮かべる先生のことを知りたい。手に入れたい。

それから私は事あるごとに先生に近づいた。
授業の質問をしたり、お菓子をあげたり。
そうしているうちにクラスの子に
「☆☆ちゃんは先生のお気にだよね。」
と言われるようになった。私自身もそう感じる。

ある日、私は下校時刻になると同時に机で寝たふりをした。
もちろんこれも先生と近づくためだ。
ここで先生が見回りに来るのは調査積みだった。
刻々と時間が過ぎ、私もウトウトしてきたとき、足音が聞こえた。
そして足音は私の前で止まりふわっと先生の匂いがした。

「…☆☆」

私は肩をビクッとさせて顔を上げた。
これは演技でもなんでもなかった。初めて呼び捨てで呼ばれたことに驚いたのだ。

「あ、起きた」

先生はあの闇深そうな笑顔を浮かべていた。
その笑顔はゾクッとするほどハンサムで私を見透かしているようだった。

この笑顔に何人の生徒が沼ったのだろうか。

先生は気に入ったものは必ず手に入れることのできる術を持っていた。
その術を私もかけられていたことに気がついた。

それは私が先生に感じる「知りたい」や「お気に入りになりたい」の感情よりももっと深く、先生と生徒との間では感じるはずのない、いや、感じてはいけない感情を出させるのだ。

いつから私は先生のお気に入りだったのだろうか。
もしかしたら私が思っているよりもずっと前だったのかもしれない。

                    










2/17/2024, 11:07:04 AM