この場所でなにがしたい?
そう問うと、君はのんびり散歩がしたい、と言った。
いいね。ここは湖が綺麗だし、夏は涼しいよ。もちろん春は桜が満開だし、秋は紅葉がある。冬は雪が降れば幻想的だろうね。いつでも楽しめるよ。
すると、彼女は心から嬉しそうに笑った。合わせた手のひらの指先を唇につける仕草は、無邪気に喜んでいる証だった。
春が楽しみだわ。絶対、二人で来ましょうね。
ああ。絶対だ。
春はやってきた。予想していた通り、桜が空と地の青に薄桃色が混ざり、可愛らしくも幻想的な空間を作り出している。
「君も、見てるかな」
虚空に、つぶやく。
『ええ。本当に素晴らしいわ。次の季節も楽しみね。ああ、その前にもう一度行きましょう。絶対よ』
無邪気な笑い声が、脳裏に響き渡った。
お題:この場所で
2/12/2023, 1:03:28 AM