木綿

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世界はとてもひろかった。

成長するまで、きっと、今よりずっとこどもだったぼくらは。箱庭のせかいで優劣を定める、井の中の蛙だった。
それから階段を駆け上がるように進んだせかいは、そのまま世界へ繋がるきらめきを持たない、必要な塩分を持たない水が広がるせかいだった。

そんな、閉鎖的で。ペリーをいつまで待っても来ない水たまりの箱庭を。世の全てと思っていた僕たちは。

幾度も傷を負って痛む手に歯を食いしばり、今までの縁を線で結び、何度も見返してはいかだを作った。

夢、希望、不安、恐怖。いくつもの感情が教科書のページのように風にパラパラとめくれながら、頬を撫でる。
きっと僕らはこの日を。
いつか必ず思い出すのだろう。

いこう、世界へと。進め、これまでの風を捕まえて。

それぞれの、希望の陸地を目指して。


「海へ」

8/23/2023, 12:09:59 PM