会社ビルの屋上。
夜中は昼間とは違って静けさもあるがビルの明かりが邪魔をして星空は良く見えない。
毎年この日は雨の事が多いが今年は晴天。空がよく見える。
暫く空を眺めていれば目が慣れてきてそれなりに星も輝いて見えるようになってきた。
織姫と彦星は今頃、仲睦まじく過ごしているのだろうか。
生憎、私の想い人は任務できっと今日は会えないだろう。
仕事でほぼ毎日顔を会わせているし、イベントをお互い指折り数えているタイプでもない。でもこうして1人でいると今日は会いたかったなとか、楽しかった事、悔しかった事をメールじゃなくて直接伝えたいな、なんて少しセンチメンタルになる。
「…会いたいな」
私の好きなあの声で名前を呼んで欲しい。
ちょっとふざけた声も、真剣な声も、任務中に時折聞ける凄く低い声も全部全部大好き。
そう思えば会いたい気持ちは膨らむばかりでどうしたものか。
1人寝転がり空を見上げる。あれから時間も経ち、ビルの電気も減ってきた。目を閉じれば風の音、気持ちがいい。
なんだかこのまま寝てしまいそうだ、そんなことを思っていたらコツ、コツ、と足音が聞こえる。
「こんな所で寝てたら風邪引くぞ、と」
目を開けると視界いっぱいに広がる星空と会いたくてしかたなかった大好きな赤髪の彼。
「レノ、今日は任務じゃ…」
「思ったより早く片付いてな。どうせ俺が最後だろうから戸締りに来たらお前がいた」
隣に座り私の頬をひと撫でするその表情は胸が苦しくなるくらい愛しい。
「レノ、おかえり」
「ただいま」
「今日ね、会えないと思ってたから凄い嬉しい」
頬に添えられていた手を取り離れないでとばかりに握ると彼は体を私に寄せて軽く口づけをくれる。
「俺もだぞ、と」
その後は暫く2人で星を眺めた。
短冊は飾らなかったけど私の想いが届いた気がした。
-七夕-
7/8/2024, 11:09:00 AM