お題《踊りませんか?》
きらびやかなドレスに豪華な食事に心はない。人々の心はどうしたってそういったモノに惹かれてしまうようだが――庭園を見渡せるバルコニーで夜風にあたれば、少しは気も紛れるだろうって思ってた。
少女にはなにひとつ魅力的に思えず、肩に乗る青い鳥に思わず愚痴ってしまう。
「あんなの毎日繰り返して、疲れないのかなあ。私だったら町で買い物したりパン焼いたりスープ飲んだりしてる方がいいのに」
『そういうものなんじゃないのか。当たり前がちがうんだから』
「ふーん。じゃあカナトも?」
「――それより踊らないか」
「へ?」
いつの間にか青い鳥は、青が散りばめられた幻想的な民族衣装を纏った青年になっていた。
白銀の月に照らされた青年はそう言って、少女の手を取った――それは何より心をときめかせる魔法の手。
離せなくなるのは、一体どちらだろう?
10/4/2022, 3:38:30 PM