昼休憩に、同期数人でランチへと出た。……まあ昼飯なのだから『ランチ』で間違いはないのだが、行ったのは職場最寄りの牛丼チェーンなので『昼メシ』と言った方がしっくりきそうだ。
よーし、給料も出たばっかだし、オジサン卵もつけちゃうぞー! などと言いながら、和気藹々とした昼食時間だった。
事件が起こったのは、その帰路だ。
腹の具合が悪い。
突然、急に、何の予兆もなく、猛烈に腹が痛い。
卵か⁉︎ 調子に乗りすぎたのか⁉︎
のんびり戻ろうぜー、などという同期の声に、いや俺やること思い出して……などと言って急かしてはみるものの、皆足取りはゆったりだ。
頼む! 急いでくれ! 俺は今、今月最大のピンチを味わってるんだ!
「お前、さっきからどーしたんよ?」
恐らくというか確実に、俺の挙動が相当に不審だったのだろう。同僚がからかうように言いながら、俺の背をバンバンと叩いてきた。
やめてくれ! 気安いのは嬉しいが、今はその時じゃないんだ!
そう思ったその瞬間。
出てしまった。そう……屁が。
まるで時間が止まったような静寂があり、俺の耳には雀か何かのチュンチュンいう声しか聞こえない。
頼む……、誰か茶化してくれ……! もういっそ、笑い話にしてくれ……‼︎
その願いも虚しく、同僚たちは「も……、戻ろうぜ⁉︎」「そうだな! 急ぐか!」などと、白々しい笑みで『無かった事』にしてくれようとしている。
同僚たちの優しさと気遣いが、心に痛い……。むしろ笑ってくれよ……。
項垂れた俺の視界に、雀がピョンピョン跳ねるように入ってきて、慌てたように飛び立って行った。
飛んでいく雀を見て俺は、今すぐ鳥になって飛び去ってしまいたい……と思うのだった。
お題『鳥のように』
8/21/2024, 4:06:35 PM