泥濘の始まりのような怠さが身体を重くする。
ぼやけている視界に誰かの姿が映り、
額にはひんやりした手のひらの感触が加わった。
自分の熱が、触れているところから誰かの手へと流れる。
まるで、冬のマグカップの気分だ。
自分に触れる誰かの手は、ひんやりして気持ちがいい。
マグカップも僕達と同じように思うのかもしれないと
思いながら、僕は目を伏せたままその手を掴んで
微かに熱を感じる頬を冷ますために引き寄せた。
頬に触れたその時、手は少し慌てたように力が入る。
僕は熱に浮かされてそれに気付かないふりをして、
薄目のままでその人を見た。
段々と結ばれてきた焦点と共に、
誰かの姿が形を成していく。
言い訳にならないくらいの
些細な微熱をこっそり飲み込んで、
あいもかわらず熱に浮かされているふりをして。
自分の微かな熱を渡すように、
あなたに触れて、溶ける。
「微熱」 白米おこめ
11/26/2024, 3:15:26 PM