長いまつ毛に縁取られた夜色の瞳に見つめられて、そのどろっとした熱から逃げるようにふいと目を逸らした。しつこく追いかけてくるようなことはせずに、代わりに「怖い?」と、優しい声が耳元に落ちて、大きな手がくしゃりと頭を撫ぜた。
あなたが怖いわけがない。
あなたの視線が、声が、言葉が、手が、体ぜんぶでわたしが愛おしいと、そう言っている気がして、こんな風にわたしを扱ってくれるひとは初めてだから。何かあたたかいものにぺしゃりと心臓を潰されて、甘くて、苦しくて泣きそうになる。
「優しく、しなくていいよ」
これまでずっと、皆そうだったから。そっちの方が慣れているから。それでもあなたは、間髪入れずに「やだ」と切り捨てた。はつりと瞬きをして顔を上げると、あたたかな手にそっと頬を包まれる。
「これからずっと、おまえは俺の大切なひとだよ」
諦めて、と、きゅっと細められた瞳に捕まって、じわと眼が濡れた。
7/13/2024, 3:42:51 AM