前々から、薄々思ってはいた。
例えば、肌寒い時。僕は大抵面倒くさがって上着を持ってこない。それで、下校時刻になっていつも後悔する。そうすると、
「センセーすげー追ってきてさぁ……めっちゃ暑い……これ持ってて。」
何故か廊下を全力で走ってきて、カーディガンを僕の肩に掛けていったり。
或いは、朝寝坊しかけて弁当を忘れてきた時。売店に不慣れな僕は競争に負けてひもじい思いをしていると、
「母さんまたアホみたいな量詰めてきた……助けて……」
なんて、米と唐揚げがギッチギチに詰まったタッパーを持ってきたり。
そんな風に、やたら都合のいい幼馴染がいるのだ。
何も考えずに享受していたが、よく考えると中々不自然だ。
それで、奴の行動の謎を見破ってやろうと、暇を持て余した僕は奴の後をつけてみた。
早朝、隣の家の窓を覗き込む。中々に不審者だが、幼馴染特権で許してほしい。
奴は天気予報を見て、学ランの上からカーディガンを羽織った。前僕に貸してくれたやつだ。
着替え終わった奴は、2階の自室から下りて朝食を食べている。
「あ、母さん。俺今日部活あってたぶんお腹空くからさ。前みたいに弁当多めにしといてよ。」
奴の母は、タッパーの蓋が閉まるか怪しいレベルで米と肉の炒め物を詰め込んでいる。なんだか見覚えのある容器だ。
と、不意に奴が振り向いた。
「……で、いつまでそこにいんの?もう遅刻するよ?」
奴の家のリビングの時計を見上げた。普段家を出る時間まで、5分もない。
大慌てで庭を飛び出して、着替えて、寝癖もそのままに玄関先で待っていた奴と合流した。
「今日ちょっと寒いね。」
確かに肌寒いが、まぁ下校までにはきっと上がるだろう。
「……ちなみに、お弁当持った?」
「…………あっ。」
鞄が軽い。もう電車に乗ってしまった。取りに帰ることもできない。
寝癖をぐしぐしと直すがてら頭を抱える僕を見つめる奴の目を、僕はあまりよく見ていなかった。
テーマ:何気ないふり
3/31/2026, 8:52:05 AM