滞る息を肺から押し出して、跳ねる喉に咳き込む
繰り返して、少しずつ欠けていく
歪に丸まった体は、転がるほどに傷を増やす
また砕けて、また罅が入って
裂けた隙間から透明な血が溢れて乾いて
気付いた頃には白く濁って醜くて
どうして汚れてしまったのか、自分でも分からない
擦るほど指を黒く染めるばかりの古い鏡
磨いても洗っても、こびり付いた煤は汗を浴びて嘲笑う
何も映さないなら使えない
使えないなら炎の渦へ
埃も煙も大差無く、羽衣のようにその身を覆い
記憶も証も焼き尽くすのだろう
生まれたことに意味はなく
灰と油を纏った心臓に価値はなく
這いつくばった道すら掻き消されて、跡形もなく
この体は酸素を求めて、懲りずに呼吸を繰り返す
終わる時まで、価値がなくとも勝手に生きる
泥水から顔を上げて
水浸しの足で立ち上がる
腐敗した鉄屑の森から拝む朝日は、かくも美しく
ただ、ただ、どうしようもなく
今日も私は人間なのだと教えてくれる
(どうしてこの世界は)
6/9/2025, 10:18:09 AM