『春爛漫』
「今年も春爛漫と言う言葉がぴったりなほど、桜の花が咲き誇る季節になりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか」
突然届いた手紙はお行儀よく、形式通り時候の挨拶から始まっていた。
「前回からさほど時間も経っていないのに、こうして手紙を送ることを少し恥ずかしくも思います。
しかしどうしても素敵な出会いがあると私の胸は高鳴り、居ても立っても居られなくしまうのです」
くしゃりと手紙を持つ手から音がして、慌てて手から力を抜く。
どうも無意識に手に力が入ってしまった。
目をつぶり深呼吸して、心を落ち着かせる。
「この度は、現在限定公開されております舞姫の雫を頂きに参ります。
それでは、またお会いできることを楽しみにしております」
そこまで確認すると、また腹立たしさで手紙を破り捨ててしまいたくなったが理性で押し止める。
こんなものでも立派な証拠品だ。
勝手に捨てては証拠隠滅になってしまう。
「またヤツから予告状が届いた! 今度こそ警察の威信にかけて捕まえるぞ!」
皆の応えは警察署が揺れる程であった。
4/10/2024, 1:59:00 PM