「小説?実はちゃんと読んだことないんだよ。はっはっは」
叔父さんは油でテカった髪をわしわしとさせながら笑っていた。
叔父さんは売れない小説家だった。
「漫画なら沢山読んだけどねぇ。小説なんて小学校のときの読書感想文くらいかなぁ。」
「それで小説なんて書けるの?」
僕は叔父さんといるのは気が楽で好きだった。今思えば見下していたところもあっただろう。
「書けるさ。なんたっておじさんは漫画も書いてたからね。」
「漫画と小説は全然ちがうじゃん。」
「見た目はな。でも物語なのは一緒だ。」
「その顔、疑ってるなぁ?いいだろう。おじさんが小説の書き方を教えてやろう。」
「大事なのは読者にいかに伝えるか、だ。楽しいお話をわかりやすく伝えるために絵を使うのか、文字を使うのか。違いなんて結局そのくらいなんだよ。」
「ふーん。なんでよく読んでた漫画は書かかなくなったの?」
「そりゃあおじさんは絵が下手だったからな。伝えたい事を伝えられる絵が描けなかったんだよ。」
「小説はそれに比べていいぞー。文字は絵より簡単に書けるし早いからな。」
「へぇー。」
「お前も書いてみたらきっと楽しいぞ〜。」
叔父さんがにかっと笑う。
「ま、売れっ子になりたいって話になるとそれだけじゃないかもしれんけどな…。」
叔父さんのそんな言葉をふと思い出し、僕はこっそり小さな物語を書きはじめた。
まぁ、確かに、、楽しいかも。
8/9/2024, 12:19:44 PM