ホシツキ@フィクション

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「何怒ってるの?」
と私はいつも言われる。でも実際その通り怒っているのは数える程しかない。
なぜこんなことをしょっちゅう言われるかというと、私は元々目付きが悪いのだ。
つり目でつり眉、基本的に口角は下がっている。
何度も言うが、怒ってる訳では無い。ただの真顔だ。

ただその顔つきのせいで離れていった人は多い。
それに話しかけてくるような人も少ない。
初対面なら尚更だ。
つまり私は友達が少ないというかほぼ居ないことだ。

“ほぼ”というのも、私に対して唯一離れない友達が1人いる。
小学校からの腐れ縁で高校まで一緒のユウマだ。

学年でも人気の彼は私に特別話しかけてくることはないが、
ほかの友人と同じように私に接してくれる。

小学校低学年の頃は昼休みなど一緒に遊んだりもしたが、高学年になるにつれて彼は男子と遊び、私は図書室に行くことが増えて接点は劇的に減った。

彼にとっては私は沢山いる女友達の中の1人でしかないが、
私の中でユウマは特別な存在だった。

それは恋愛感情などではなく、ただずっと腐れ縁が続いている唯一の友人だからだ。


「ねぇ、あんたユウマの何なの?」
前述の通りユウマは学年の中で人気だ。
ユウマの事が好きな女子は多いし、噂ではファンクラブまであると聞いたこともある。

そんな中で小学校から一緒で、陽キャグループでもないのに声をかけられる私が邪魔なのか
派手な女子から問い詰められることがまれにある。

『漫画以外でこういうことってあるんだ』

と初めて呼び出された時は恐怖もあったが、真っ先にそう思ったものだ。

私はいつも通り
「ただの友達です」
と答える。私の地味な見た目もあってか、大体
「あんたみたいなやつユウマに似合わないから話しかけないでよ。目障り」
的なことを毎回言われ、去っていく。
今回も決めゼリフのようにその言葉を言われ、彼女らは満足げに帰って行った。

『少女漫画ならここでユウマが来るんだろうな』
とは言っても現実はそんなはずはない。

私はくるりと踵を返し自分の教室まで戻って行った。


帰り道、家の最寄り駅へと向かう電車の中で偶然ユウマと会った。
はたと目があい、私は昼間のこともあってか目を逸らす。

「ねぇなんでシカトするのー」
そんな私に対してユウマは話しかける。
「ユウマのファンに話すなって言われたから。ユウマに似合わないってさ。」
「そんなの気にすんなって〜。」

ヘラリと笑うユウマの顔を見て、何も言わずまたフイッと視線を逸らす。

「あ、さっきまで拗ねてたけど、今機嫌いいっしょ?」

なぜ分かるのか。ユウマはいつも私の感情を当てる。
「そんなことない」
読まれているのがなんだか恥ずかしくてうつ向く。

「………俺、ユキの目好きだな〜。カッコイイ狼みたいでさ」

私のことをユキと名前で呼ぶのは両親とユウマくらいだ。
肉親以外で呼ばれることは無いのでちょっとくすぐったい。

「狼は初めて言われた。私の目はカッコ良くは無いけど」
「ユキはさ、自分のこと卑下しすぎでしょー?もっと自信持ったらいいのに。それに俺はユキだから話しかけてんだよ?」
私は黙った。
嬉しい気持ちの反面、ユウマが眩しすぎて返事をするとキツいことを言ってしまいそうな気がしたから。

ユウマもそんな私の気持ちが伝わったのかは知らないが、それ以上何も言ってこず、二人一緒の方向に揺られながら最寄り駅に着いた。

「これからもさ、どんな態度取られても俺はユキの友達だからな」
改札を抜けてから急に声をかけられた。
ユウマの方を見ると、真剣な眼差しだ。

『なんでそんなこと言うんだろう?』
私は彼の意図が全く分からなかった。
「??…うん…?」

ユウマは私のキョトンとした顔を見てハハッと笑った。
「分かってないの?まぁ、そりゃ、分かんないか!」

本当に分からず引き続きキョトン顔を継続する私にユウマは相変わらずニコニコと私を見つめる。

「分からないならいいや〜、とりあえず外野がなんと言おうと俺らは友達だからね〜?」

私は人の感情を読み取ることが極めて苦手だが、さすがにこの言い方は馬鹿にされてる。


ギロリと無言で睨むと、ユウマは
「その目、好きだわ〜」
と言いヘラリと笑う。

「…変態?」

そう言った時の私の目を見て、彼は嬉しそうに笑ってこう言う。

「あ、また喜んでる〜」


【鋭い眼差し】~完~



個人的に柴咲コウさんの目付き大好きです。
私自身タレ目気味なので無い物ねだりなのです…笑
いつも♡︎ありがとうございます(((o(*゚▽゚*)o)))

10/15/2022, 12:19:45 PM