Alan.Smithee☆彡

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『線路』


私の部屋の窓からは、線路が見える。
線路とはいっても電車は走らない。
廃線となった寂れた線路だ。

生えっぱなしの草が、今では我が物顔で占拠している。

ある映画のワンシーンに憧れて、線路をこっそり歩いたこともある。
夏だったこともあって、無数の蚊に刺されて二度と近寄らなくなったけど。

だけど、虫刺されを気にする必要のない、この部屋から眺めるのは好きだ。

視界に影が入り込んで、線路を見ると、遠くのほうから電車が見えた。
廃線だから、もちろんそんなことが起こるはずもなく……。

「あー、なるほど今週もか」

仕事疲れの寝不足状態、気力体力0状態ーーそんなコンディションのときにだけ、なぜか走る電車が見えるのだ。

幻の電車は陽炎の中を突き進んでくる。
私はそれに向かって手を振った。

「やっほー。元気ですかー?」

なんて、意味のない言葉を見えない乗客に投げかけてみる。
当然、反応はない。

「私は生きる屍じゃー!」

そう自棄になって叫んでも、やっぱり反応はなかった。

「そっちはどうですかー?」

と、聞くけれど、もちろんこれにも答えが返ってくるはずもない。
でも、なんとなくだけど、この線路の先に向かって本当に走っているんじゃないかなって。
私は漠然とそう思っている。

そして、たまたまこのコンディションのときだけ私の目にも見えるんだ。

だから、私は今回も語りかける。

「週明けから、またがんばります!!」

私の言葉が届いているかはわからないけれど。
それでも、こうして私は線路の先へと思いを馳せることが好きなんだ。



2024.9.26

9/26/2024, 5:55:46 AM