ショウタ

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子供の頃は

 一番最初の記憶は、夕暮れ時にアスファルトに並んだふたつの影だ。背中に優しい時間の経過を感じながら、手を繋いで覚えたての童謡をふたりで口ずさんでいた。その足下から延びた影の大きさは殆ど変わらない大きさだったっけ。

「あれ、何か怒ってる?」
今の影の長さの差と記憶のそれを比べていたら、頭ひとつ分上から幼馴染の声が振ってきた。どうやら表情に出ていたらしい。
「べつに」
あの頃より随分大きくなったその手を取ると、嫌がらせの如くこちらへ引っ張った。わ、と小さく声を上げるのを見てしてやったり、と思うのだった。


2024.6.24

6/24/2024, 3:06:46 AM