真っ暗な空間、あるいは、真っ白な場所。
そこに私は座り込んでいた。
理由は分からない。ここがどこなのかも、私が何なのかも。ただ体は非常にけだるく、動かそうにも指一本動かない。
こんな場所には、私以外誰もいないだろう。そう思って、周りを見る。
――いや、一人いた。
私から少し離れたところに少女が一人、うずくまっていた。手足は細く、顔色も悪い。
少女は喘ぎ、骨の浮いた手で地に手を伸ばす。しかしそこには何もなく、空をつかんだ。少女の手はそのまま力なく地を這う。
私は唐突に悟った。少女はお腹をすかせているのだ。
あぁ、かわいそうに。何かあげられたらいいのに。でも私は何も持っていないし、そもそも体が動かない。
少女が重そうに頭を上げ、辺りを見回す。髪がバサリと前にかかり、顔を半分覆っていた。ぐるりと首を回し、ふと私の方を見た。
その瞬間、少女の口がだらしなく開き、眼球が飛び出すほど眼が見開かれる。少女は体をずるずると引きずるようにこちらに近づいてきた。
私の肩に手がかけられ、少女は私の上にまたがった。少女の白い手がそっと私の手を取る。微かに震える唇が私の指に触れる。そして少女の小さな歯が私の指先に立てられ、
――かりっ――
私の指先がかじられた。私の指は脆く崩れ、少女の口の中に入っていく。不思議と痛みはなかった。私の指先から砂のようなものがこぼれ、少女のスカートにかかる。こぼれていくのは――砂糖?
こぼれる砂糖を少女が惜しそうに舌を伸ばして舐め取る。口の周りや手を汚しながら、少しずつ私の手をかじる。
やがて私の体に覆いかぶさるようにしてむさぼり始めた。
私の手が、
ぱりぱり、しゃくしゃく、こくん
腕が、
ざくざく、もぐもぐ、がりっ
肩が、
むしゃむしゃ、ばりばり、ぺろっ
少女の中に収まっていく。
こぼれるのは砂糖ばかり。――私は砂糖菓子であったようだ。女の子の大好きな。
少女の目には貪欲な光が宿っている。こんな小さな体のどこにこれだけの物が入っていくのだろう。まぁいい。少女が満足してくれるなら。
ひどく甘い感覚の中、私はそっと意識を手放した。
7/14/2024, 3:25:58 PM