題:愛で溢れさせて
『大切な場所=寂しい場所』
そう認識するようになったのはずっと昔。チコ達と星の海に旅立ってからまだ間もない頃だっただろうか。
そうだ。確かに家族の思い出がたくさん詰まった大切な場所は、記憶の底にずっと居座る寂しい存在となる。そして次第に、そこに行くことすら拒否するようになる。
ママを亡くして2年ほどは、花を手向けにあの丘に赴いた。けれどあの丘に通う内に、どうしようもない喪失感に駆られ、そのうち行かなくなった。
広い城の中に居ると、いつも虚無感に襲われる。ママのところに行きたいと、何度願っただろう。でもママは、それを、きっと、拒むだろう。『もっと生きなさい、強く、希望を持って、生きなさい』と。
でも、このどうしようもない喪失感と虚無感は、どうやって埋めればいい?いつまで心を空いたままにすればいい?
そんな疑問が、毎日私の頭の中で繰り返される。
『大切な場所=愛の溢れる場所』
そう認識するようになったのはつい最近。チコ達のママの代わりになることを決意して、何百年も旅してのこと。
寂しい場所と認識するようになったのはずっと昔なのに、愛の溢れる場所と認識するようになったのはつい最近だなんて。……もっと早く気付きたかった。
星見のテラスには、楽しい小さな愛が溢れていて。城の庭には、煌めく小さな愛が溢れていて。そして、私達の暮らしていた、城には……。
華やかで幻想的な小さな愛が、美しい彩星のように溢れていた。
涙も溢れる。
ーーママ、私はこんなに幸せに満たされたところに居れたことが……何よりも……嬉しい……。
雨の降る夜。私は雲の上で、お星様になって、ロゼッタが泣き止むのを待っていました。
お題『小さな愛』
6/25/2025, 1:26:52 PM