燈火

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【おもてなし】


金曜の夜。酷い雨音の響く中、君の来訪を待つ。
ピンポーンとインターホンが鳴って扉を開けたら。
「こんばんは〜」笑顔でずぶ濡れの君がいた。
荷物を前に抱えているが、当然守れてはいない。

服が肌に張りつき、髪から水が滴っている君。
「ちょっ、動かないで。そこで待ってて」
僕は急いで脱衣所に向かい、タオルを取って戻る。
「とりあえず拭いて。で、お風呂入りな」

足元にタオルを引いて脱衣所までの導線を引く。
玄関から最も近いので、廊下はあまり濡れずに済む。
先にシャワーを浴びているよう、君に言いつけた。
今からでも十分か二十分でお湯は溜まるはずだ。

しばらくして、君が風呂場から出てきた。
元から泊まる予定だったが、君の荷物もずぶ濡れ。
仕方ないので僕の服を着替えとして置いていた。
見ると、ぶかぶかではなさそうで安心した。

濡れた髪をタオルで拭く君に、手招きをする。
「ちゃんと乾かさないと風邪引くよ。おいで」
不満そうに口を尖らせて、君はこちらへ歩いてくる。
しぶしぶ、という感じで僕の脚の間に腰を下ろした。

ドライヤー中は轟音でまともに話ができない。
それが嫌で、静音にこだわって買い替えたが。
君は熱風に包まれてうっとりと目を閉じている。
まあいいか、と僕は乾かすことに専念した。

髪を乾かし終えて、僕はふと湧いた疑問を口にする。
「折り畳み持ってなかったっけ」「持ってるよ」
君は続ける。「でも濡れたい気分だったんだもん」
「……先に教えて?」せめてお風呂を用意したい。

10/29/2025, 6:45:36 AM