一緒に住んで居ないのだからそれぞれ自分たちの生活リズムがあり生活スタイルを持っている。
人を好きなった。
それまでどこで何をして過ごしているんだろうなど考えたことのない私はそのリズムが気になってしょうがない。洗い物をしながら彼はまだ仕事かなとか、今日はもうご飯食べているのかもとか。彼の日常を空想している。
その空想に私を入れることはしない。だって彼の生活なのだから。ただ、彼が私の居ないところでどう生活をしているのかが気になるだけ。頭の片隅は彼のことばかりで埋め尽くされた。
コツ、コツ。柔らかな部分に当たって私のなかに溜まっていく小さな刺。自分ではどうすることも出来ない焦りと寂しさが募る。
けど。
彼に会うと溜まりに溜まった刺たちも溶けてしまう。
「私って単純かも」
「俺に会えなくて寂しかったの?」
「…うん」
素直に答えると彼は目を丸くする。青いビー玉がころりと落ちそうで、ぽかんとした顔は可愛いものだった。
「どうしよ、君が素直な時って少ないから貴重だな…」
「そうなの?」
「そうだよ。よかった、俺も君に会えない時は同じ気持ち」
刺がすっかりなくなって今度はふわふわの羽毛に包まれている気持ち。あったかいなぁ、なんて夢心地で彼の抱擁を受け入れていた。
1/25/2024, 11:32:43 PM