彗星

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放課後、広いグラウンドとオレンジがかった夕日が私の心を今が永遠であればいいのにと思わせるほど美しく、満たされていった。

ガラガラ──
「あれ、まだ居たのか」
「直人…!部活終わり?」
「うん、恋雪は?」
「私は……勉強してた」
「へー、真面目だな。でももうそろ帰らないと先生に怒られんぞ」

青さをまだ忘れない夕焼けが、カーテンの隙間から彼の顔を照らす。
「うん、でもまだ勉強し足りなくて。」
「お前そんな真面目だっけ」
「失礼だなー笑真面目だよ」
「笑そっか、てか恋雪最近元気ない?」
「え、なんで?」
「いや、なんとなく。友達といるときもなんかぼけっとしてるっていうか」
「そうかなー」
「うん。なんかあったのかなって」
「うーん。そうだなー」
「?」
「…別に!なんにもないかも笑」
「ほんとか?」
「うん、考えてみたけどなんにも思いつかないし」

キーンコーンカーンコーン───
『あ、』
「鐘鳴っちゃったね」
「だな、そろそろ帰るか」
「うん…」
「?どうした?」
「いや、なんていうか」

彼と2人きりの教室は静かで、暖かくて、金木犀の香りが少し香る。
落ち着く空間で、なんだかこのまま二人で過ごせてしまいそうなくらい時間がゆっくりに感じた。

このまま、ふたりで______

「…」
「っ、おい、ばかっ…!」

カーテンが揺れ、私たちが影になる。
唇を重ねて彼の手を握った。

「恋雪っ、」
「……次また二人きりになっても、もうしないから」
「は…?」
「直人にこんなことして、許されないのはわかってる。だからもう、次こんな状況になってももうしない」
「…」
「ごめん、直人」
「……俺は、迷惑じゃなかった。」
「え、?」
「俺は恋雪のこと、ずっと、小さい頃からずっと──」

〈おーいまだ誰か居るのかー?もう下校時間だぞー。〉

冷たい風が金木犀の匂いと共に教室に広がる。
夕日は沈みながら、落ち葉を落としていく。

これは、秋の訪れなのかもしれない。

10/1/2025, 3:01:13 PM