私は金魚を飼っている。
大きなヒレをもった優雅な食いしん坊と泳ぐのが得意だけど怖がりな食いしん坊の2匹だ。
もう家にきて4年目になるだろうか。最初は小指ほどの大きさだったのに、今じゃ両手ですくうのも難しいほど大きくなった。小さな水槽で一緒に育てていたけど、手狭になってしまったので1匹1水槽という贅沢仕様に変わった。
この2匹はペットショップで買ってきた子たちだ。
昔、お祭りの屋台でとってきた金魚を育てたこともあった。私が幼かったのもあって世話なんてものはエサを与えていたくらいのものだった。ペットなんて飼ったこともなかったから家で何かの世話をすることがどういうことなのか知りもしなかった。
3日目くらいだったか。朝起きてバケツの中の金魚を覗き込んだとき、みんな水面に浮かんで動かなくなっていた。
親に「死んでしまったね」と言われて、庭の木の下に墓をたてた。ザックザックとシャベルで穴を掘って1匹ずつ手ですくって埋めた。花を供えてお経の真似事をして弔いは終わった。
次の日にはもう墓のことは忘れて、金魚がいたことも忘れた。
目の前でパクパクとごはんを頬張る2匹をみて、私はいつも考えてしまう。
この子たちもいつか死んでしまうのだろうか、と。
私はそのときどう思うのだろうか、と。
「ちゃんと弔えたらいいな」
ポチャン、ポチャンとそれぞれが水面を揺らした。
なんとなく慰められた気がして嬉しくなった。
でもね、この子たちはとても賢いから私が手にごはんをもっているときだけ寄ってくるんだ。
意外と、薄情なのはお互いさまなのかもしれない。
【題:お祭り】
7/29/2023, 8:41:28 AM