初心者太郎

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—ぬいぐるみから見えるもの—

最近、外出している間に知らない誰かが家の中に入っている。それに気がついたのは、私の下着が毎日一着ずつなくなっていたからだ。

「ナナリンさん、大丈夫です。必ず私達が犯人を捕まえてみせます」警察官が言った。
「ありがとうございます」

『ナナリン』は私がファンから呼ばれている愛称だ。偶然、対応していただいた警察官が私のファンだった。

「では、決行日は明日ですね」
「はい、よろしくお願いします」

私は頭を下げて、警察署を後にした。
警察官と、ある作戦を立てた。それを確実に成功させるには、いつもと変わらない立ち振る舞いを犯人に見せなければならない。

「ただいま」誰もいない家の中に声をかける。

リビングまで進むと、クマのぬいぐるみが座っているのが見えた。数日前に事務所に届いていたファンからの贈り物だ。

あれを家の中に置いてから事件は始まったのだ。きっとあの中に監視カメラが仕込まれているのだろう。

少し仮眠をとり、起きた後、私はある細工をした。

——

朝、ナナリンが家を出たことを確認して、いつものように僕は来た。ピッキングでドアを開け、中に入る。

「やっぱりいい匂いだなぁ」

玄関を入って左手に進むと、浴室がある。僕はそこまで足を運んだ。そしてカゴから下着を漁り、一着手にする。
そのままリビングまで進んだ。扉を開けると、僕は何者かに後ろから床に叩きつけられた。

「犯人確保!」

待ち伏せしていた何人かの警察官がいた。そしてその後ろからナナリンも姿を現した。

「なんでここに……?」

床に押さえつけられ、息が苦しい。だが、なんとか力を振り絞り、僕が贈ったぬいぐるみの方を見た。

「スマホ……?」

ぬいぐるみの前に、スマホスタンドが立てられていて、スマホが横向きに置いてある。

そして理解した。
僕は映像を見せられていたんだと。画角が少し変わっていたのは、そういうことだったのか。

——

私はホッと息をついた。
犯人はパトカーで連れて行かれ、事件は幕を閉じた。ひどく疲れた。

もうこんな目には遭いたくない。セキュリティの高い場所に引っ越そう。
私はそう決めた。

お題:贈り物の中身

12/3/2025, 4:06:02 AM