祖父母の家にあった壁掛けの時計。1時間ごとに短い音楽のなるそれが幼い頃から好きだった。
真夜中でも鳴り響く鐘のような音はともすれば不気味さすら漂わせるにも関わらず、静寂の中たったひとつ鼓膜を震わすその響きが心地いいと感じた。
揺れる振り子を好き好んでただ眺めている時間さえあった。一定のペースで行ったり来たり忙しないそれをじっと見つめていると、考えても解決しない自分の悩みを忘れられた。
一人暮らしを始めたワンルームに時計はない。アナログの壁掛け時計どころか卓上のデジタル時計すらも。初めから設置されていたテレビも撤去した。
スマートフォンひとつあれば時間の把握に困ることはない。アラーム機能もあればカレンダー機能もある。実用性で考えるのならば、アナログよりデジタル。そもそも用途の被った時計は不要だった。
それでも腕時計を買うと決めて、数多の中から選んだのはただ回る針が時間を示すだけのシンプルなシルバーの時計だった。なんの機能もない、ソーラー充電だけが
テーマ:【時計の針が重なって】
9/24/2025, 11:25:30 PM