『記憶の海』
深く、どこまでも青い海
光を吸い込み、静かに揺蕩う
波の音は遠い日の囁き
砂浜に残る足跡は、過ぎ去った時間
貝殻を拾えば、幼い日の笑顔
海面に映る夕日は、切ない約束
喜びも、悲しみも、後悔も
沈み、漂い、溶け合う海
ふと、強い潮流に巻き込まれ
鮮やかに蘇る、忘れかけてた風景
それでも海は、ただ静かに
すべてを包み込み、受け止める
ああ、記憶の海よ
あなたは広大で、神秘に満ち
私のすべてを映し出す鏡
そして私は、今日もまた
この海を彷徨う一隻の小舟
『記憶の海』
まぶたを閉じれば 上映会場
記憶のフィルムが カタカタまわる
背中に負われて まつりを見てた
高い高いで 大冒険
何才だろうか 金魚をすくい
仮面をかぶって チャンバラごっこ
海水浴場 ナンパも多くて
日焼けをしながら 遠くを見てた
アサリをとったり マテ貝つかんで
帰りは満ち潮 溺れかけたっけ
誕生日には ケーキを作った
カラオケうたって ゲームで夜ふかし
家族の世界は 友だちに変わり
恋とか夢とか 未来を語った
初めて葬式 死体に遭遇
悲しさよりも 恐怖だったな
結婚式では 費用が高くて
もったいないなと 心でつぶやく
成人式では 親子でも写真
自分より母親が 喜んでいた
大人になっても いろいろあった
それでもあの日々 かけがえのない日々
かがやく海原 まぶしい反射
記憶の海は しょっぱいな
まぶたを閉じれば 子供に帰る
記憶の海にしか いない⋯人を思う
5/13/2025, 2:51:41 PM