『木漏れ日の跡』
春の新緑が青葉へと移り変わり、次第に夏の暑かった日が遠のいていく。
私が幼い頃によく遊んでいた公園に生えていた大きな木。
世界のことを何も知らない子どもだったからか、余計にそれは大きく感じた。
そして、それは常に私の背中にあった。
子どもが減り、彼らの純粋な笑い声が無くなっていった。
荒廃した遊具に、手入れされなくなった草木。
公園からの子どもの影が消えていき、そこにはその広葉樹だけが風に揺れていた。
悲しそうに、でも、穏やかに。
数年後、あの公園の半分を住宅地にするという動きになった。
もう、この場所には、公園ひとつ無くなるくらい、何も変わらない程までに子どもがいない。
誰もいなくなった地面には光だけが残っていた。
これはかつての笑い声のかけらだった。
私たちの反対運動も間もなく、その公園は解体された。
木漏れ日の跡だけがそこに揺れていた。
11/16/2025, 4:28:23 AM