『 』
透き通る空を写したような髪色をした彼は、顔を上げて真っ直ぐに前を見つめているようだった。
風は彼の決断を後押しするかのように、しかし名残惜しむかのように戯れ、空の向こうへと吹き抜けていく。
「沢山のものを貰ったと、そう思う。返しきれないくらいの、大事なものを」
彼は一言一言を大切に噛みしめるかのように、ゆっくりと言葉を吐き出した。
風に遊ばれていた空色の髪は、彼自身の白く大きな手でそっと抑えられる。
垣間見えた口元には、穏やかな笑みが浮かんでいた。
――あぁ、と。見つめていた自分の心が沈むのが分かった。
彼はもう決めてしまっているのだ。己の行く道を。その先を。
もはや迷いなど、その胸の内には無くなってしまったかのように。
そうして彼は、人とは違う銀色を灯した瞳孔をこちらへ向けた。
「だからこそ俺は行きたい。それが人々に対する、最大限の恩返しになるのならば」
そう思えたのも君のおかげだ、と。彼は目を細めて穏やかに笑う。
皮肉にもこうして見つめ合うのは久しぶりだった。
浮かんでは消える無音の言葉が、吐く息と共に消えていく。
己一人の気持ちのために彼を悩ませてはいけない。
ぐるぐる渦巻く言葉を飲み込み、真っ直ぐと立つその人へと笑みを向けた。
「行ってらっしゃい」
『行かないで』
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こんばんは、りありあリィと申します。
自キャラたちを動かしたく、小説に挑戦してみています。
思いついた物をザカザカと。一話短編な感じで書いてますが、そう見えるかな?
その内ちゃんと本編みたいな形で、連続したお話が作れるといいな…
よろしくお願いします。
10/25/2023, 9:11:29 AM