お題「春恋」
春は嫌いだ。別に花粉症だからではない。
溶けた雪は汚いし、ぬかんだ土を踏む感触は気持ち悪い。
なにより、春はあの人が旅立つ季節だ。
あの人は雪が降る前に私たちの村を訪ね、一冬を過ごし、春になれば去っていく。
今年も、あの人は雪がまだ残るうちに村を出ていった。私は猫のミーコと、あの人を見送った。
あの人がいない家で、今日も私はぼんやりと本を読む。ミーコが私に身体をぐいぐいと押し付ける。そういう季節だ。あの子は、子供を作ることは出来ないのだけど、習慣だけが残っている。
春は確かに恋の季節だが、私とミーコにとっては限りなく他人事だった。
冬が、待ち遠しい。
(了)
4/15/2025, 1:40:46 PM